京都で古い町家を見かけたら、小屋根の上をよーく見てほしい。そこには、身長20〜30センチほどの瓦製の人形がちょこんとのっているはずだ。これは「鍾馗さん」と呼ばれ、もとは中国の魔除けの神様が日本に伝わったもの。しかし、この鍾馗さんを屋根にのせるのは、京都をはじめ関西あたりにしか見られない風習だ。

魔除けの神様だから、役割は鬼瓦と同じ。その家に入ってくる邪気を払うため、空を睨むその視線は鋭い。しかし、デザインは実に多彩で、その表情もとても豊かだ。いかにも「神様」といった風格を漂わしているものから、ユーモラスで愛らしいものまで、いろんな鍾馗さんが通りを見下ろしている。

鍾馗さんを屋根に上げるようになった理由は諸説あるが、繊細で雅な風情を持つ小さな町家にいかつい鬼瓦が似合わないことだけは確か。京都人の美意識もちらりと垣間見えるような…。

しかし、昔ながらの町家は減り、京都に長年住んでいる人でも、「そんなん、あったっけ?」というほど日陰の神様になってしまった。が、なんのまだまだ魅力は十分。探してみればあちこちに残っているもので、その奔放ともいえる豊かな意匠が楽しくて、もう一つ、もう一つとつい長めの散歩になってしまう。そんな鍾馗さんに出会いながらの京のそぞろ歩きも魅力的である。

また、京・寺町商店街の中の喫茶店「カフェ・アンジェリーナ」では、いろんな鍾馗さんの写真が飾られているので、まずはそちらにも立ち寄ってみよう。